本日は「ヤンゴンで食用パーム油の配給が削減され、闇市場価格が公定価格の約2.5倍に達した」こと、「ミャンマー国営航空がカレンニー州ロイコウへの路線を約4年ぶりに再開する」こと、「マンダレー管区シングー郡で軍政任命の行政官2人が武装集団に射殺された」ことを取り上げました。いずれも日本ではほぼ報道されていないニュースです。
ミャンマーはパーム油の輸入国で、外貨不足と輸入制限が慢性化しています。軍政は2021年クーデター以降、外貨獲得を優先する政策をとり続けており、国内流通分を絞ることで輸出向け外貨を確保しようとしているとみられています。2026年7月時点で1ドル=4,310チャットという水準まで通貨が下落しており、輸入コストを大幅に押し上げています。
食料品・燃料・医薬品の全分野で価格高騰が続いています。パーム油は多くのミャンマー家庭の主要食用油で、日常的に欠かせません。闇市場への依存が高まるなか、貧困層・低所得層の生活はクーデター前と比べ大幅に悪化しており、ユニセフなどは栄養不良リスクの拡大を警告しています。
日本在住のミャンマー人技能実習生・特定技能労働者の多くは、ヤンゴンや地方都市に家族を残して働いています。生活物資の値上がりは家族への仕送り額の実質価値を下げるため、労働者本人の就労継続意欲や精神状態にも影響します。建設・BIM分野の人材育成・紹介に携わる立場からも、帰国後の生活基盤が揺らいでいる現状は把握しておく必要があります。
ロイコウはカレンニー(カヤー)州の州都です。同州は2021年クーデター後にいち早く武装抵抗が拡大した地域で、カレンニー民族抵抗軍(KNDF)などが活動しています。軍政は州内の主要都市は抑えているものの、農村部や山岳地帯の多くは抵抗勢力の影響下にあります。
国内航空路線の再開は、軍政が「一定の統治を回復した」と内外に示すシグナルとして機能します。一方、人道支援関係者からは「軍政支配地への航空アクセス強化が、紛争地への物資・人員輸送に利用される可能性がある」との懸念も出ています。日本のODA支援で建設・整備された地域インフラが軍政の管理下で運用される実態は、対ミャンマーODA議論とも無縁ではありません。
日本の建設・インフラ企業はミャンマー全土でのビジネス展開を検討する際、交通インフラの安定性を重視します。軍政支配地域では国営航空が機能し始めているものの、抵抗勢力の活動が続く地域では安全確保が困難です。現地へのアクセス可否を含む最新の治安情報は、投資判断の前提条件となります。
ミャンマーでは軍が拠点都市を制圧しても、農村部や周辺エリアでの抵抗活動は止まりません。2024年に一度PDFが制圧したシングーは、軍による奪還後も地元住民の支持を失った親軍幹部が標的になり続けています。軍政任命の村落行政官は「軍の末端組織」とみなされており、抵抗勢力の攻撃対象になるケースが全国的に増加しています。
ミャンマー軍政は地方統治のために村落・町区レベルの行政官を任命していますが、その多くが身の危険を感じて着任を拒否したり、逃亡するケースが相次いでいます。行政機能の空洞化は医療・教育・戸籍管理の崩壊につながり、地方に住む一般市民の生活環境をさらに悪化させています。
マンダレーは日本企業のビジネス拠点としても歴史的に関係が深い都市です。その北部に位置するシングーを含む広域での治安悪化は、マンダレー以北でのサプライチェーンや人材移動の安全性に影響します。ミャンマーへの人材派遣・建設業支援を行う立場からも、地方の治安情勢は継続的に把握すべき情報です。